2012年5月9日水曜日

原発事故に対するシステム工学の視点 1

平家池のつつじ
筆者は大学でSysMLなんかを教えたりしてる関係からか、時々、今回の原発事故に関する意見を、若い人から聞かれる事があります。
 従来は、あまり批判的な事を言っても、いたずらに若い人を不安にするだけだと思い、あまり語りませんでしたが、事故後1年以上経ちすべての原子炉が停止した今、私見を述べてみたいと思います。

最初に筆者の立ち位置を明確にしておいた方が良いと思いますので、それを先に述べたいと思います。
筆者は原子力技術は人類が獲得すべきすばらしいテクノロジーだと考えます。そして、当面のエネルギー政策として原子力発電は今の日本に必要だと考える人間です。
しかしながら、同時に、今の日本の現体制ままで発電が再開する事には断固反対する者です。
 理由は大きく別けて、技術的側面(システム工学)と人間系側面からなりますが、本日は技術的側面について述べたいと思います。

システム工学の視点からみた今回の事故

巷間、今回の地震は1000年に一度の大地震であり、全く想定外の出来事だっと言われています。
マスコミが言う事ですから、鵜呑みにする事は出来ませんが、事故の経緯や対応を見ても明らかに準備がされていなかった事は事実でしょう。
しかしながら、 システム工学的な立場から言うと、今回のような天災は絶対に想定すべき出来事です。
簡単な確率の計算をしてみましょう。
原子炉の稼働期間は30年で設計されています。そして、その稼働期間中に1000年に一度の天災に遭う確率は、30÷1000 = 3% です。
これは、事故の影響を考えると途方もなく巨大な数字です。
この数字は原子炉一基当りであり、日本中にあるすべての原子炉の数を考えると、日本のいずれかの稼働中の原子炉が、1000年に一度の大災害に遭う確率は、下手をすると10%を超えてしまいます。(かなり控えめに計算しています。)

これを、別のシステム・プロジェクトと比べてみましょう。
宇宙開発は極めて危険を伴うプロジェクトとして知られていますが、人類が最初に月に降り立ったアポロ計画では、宇宙飛行士が(月に着陸できるかどうかは別として)生きて地球に戻って来れる確率、設計目標を99.9999999%として設定していました(いわゆる9が9個でナインナイン)。
これは生きて地球に戻って来れない確率(設計目標)が、10億分の1以下である事を意味します。
 それに対し、すべての日本の原発が安全に稼働する確率(設計時点での見積もり)は最大でも90〜97%程度であり、3〜10%の確率で予測不能の状態に陥る可能性がある事を示しています。

向井千秋さんは、日本人初の女性宇宙飛行士として、その業績、勇気は高く賞賛され、日本人の誇りとするところですが、設計目標のみの観点から言えば、彼女よりも我々日本に住む普通の日本人の方が、実は遥かにチャレンジャーだったと言うのは、笑うに笑えません。

(続く)

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